3-2.加工・組立のための基礎知識
● 鉄筋の最小かぶり厚さ
鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートが一体となって慟くことにより、その性能が発
揮されます。そのために、鉄筋のかぶり厚さは火災時における耐火性、鉄筋の中性化
における耐久性、力学的な条件を考慮して決定されています。
鉄筋の最小かぶり厚さは、図面に指示することになっています。指示がないときは、下表によります。
「標仕」では、柱、梁などの鉄筋の加工に用いるかぶり厚さは、施工誤差を考えて最少かぶり厚さに10mm
を加えた数値を標準とします。
柱や梁の主筋にD29以上を使用する場合は、主筋のかぶり厚さを鉄筋径の1.5陪以上として最小かぶり厚さを
決めます。この1.5というのは、付着割裂破壊の防止からきている数字です。
鉄筋のかぶり厚さは、鉄筋の交わる部分、仕上げの有無,屋外・屋内などで違いが出てきます。同一部材でも部分的にか
ぶり厚さが変わってくる場合もありますので十分検討が必要となります。
例えば、下図のように柱と梁の面が同じときには、梁の鉄筋を柱筋の内側に追い込むことになり、下図では梁と梁が交差す
ることによってかぶり厚さが大きくなります。
・柱と梁
・梁と梁
α:柱主筋径
e ::フープ径 スタラップ径(径が違う場合に加算する もので同じなら0)
β:交差する梁主筋径
このようにかぶりが厚くなりますと梁筋の配置にも影響が出てきますので、設計者と協議をして対処しま す。
また、壁には打継ぎ目地を付けますがこの場合には、目地底よりかぶり厚さを取るため一般部よりさらに くなることがあります。
鉄筋の継手
●重ね継手
重ね継手•定着
鉄筋端部をある長さにわたり平行に添わせコンクリートの付着力を介して継ぐ方法です。
●ガス圧接継手
鉄筋の接合面をガスバーナーで加熱し、圧力を加えて接合する方法です。
近年、太径異形鉄筋の使用が増加してきましたが、これを接合するために重ね継手やガス圧接のほかに
多くの新しい継手工法(機械的,圧着及び溶接)が開発されています。
●特殊継手の分類
スクイズ継手
*:ねじ継手……鉄筋にねじを切り、それをカップラ一でつなぎます。
径の異なる鉄筋の重ね継手の長さは、細い鉄筋の径によります。
下表は、設計基準強度(Fc)が21N/m㎡以上36N/m㎡以下の場合に使用します。18N/m㎡のL1、 L2は、Fc = 21N/m㎡の
値に5dを加えたものとします。フックがある場合には、フックの中心(曲げ芯)までとし、フック部分 L は含みません。
SD295A
SD295B
SD345
SD390
コンクリートの
設計基準強度
Fc N/m㎡
21
24
27
30
33
36
21
24
27
30
33
36
フックなし
フックあり
L1 L2
40d 35d
35d 30d
45d 40d
40d 35d
L3
小梁 スラブ
25d
10dかつ150mm以上
L1 L2
30d 25d
25d 20d
35d 30d
30d 25d
L3
小梁 スラブ
15d
(注> 1. L1::継手並びに2 .及び3 .以外の定荇長さ
2. L2: •割裂破壞のおそれのない简所への定荇長さ
3.L3: 小梁及びスラブの下端筋の定荇長さ。ただし,基礎耐圧
スラブ及びこれを受ける小梁は除きます。
隣合う継手の位置
鉄筋間のあき
あきは次の3つの条件の中で最大のもの以上とします。
1) 粗骨材の最大寸法の1.25倍
2.) 25mm
3) 隣り合う鉄筋の平均径の1.5倍
そう、狭すぎると付着強度が落ちたり骨材が引っかかったりするんだ。
そうでもないんだね!
例えば、梁での2段筋ではあきすぎてはいけないんだ。
フックの付ける場所は?
いろいろあって
例えば火災時に2方向から火を破ったり割裂破壊しやすい部分に付ける
標仕で法規上フックを付ける必要のない場所にフックをつけるのは組立時のミスを防ぐ目的があるんだ。
豆知識
火災を受けた場合を考慮して、建築基準法施行令第73条より柱•梁の出隅の主筋または煙突の鉄筋にはフッ
クが必要となります。また、フック末端の余長(フック先端の直線部分)の寸法は、過去の被害状況や実験から
崩壊防止のために定められた値です。
鉄筋の末端部には、以下の場合にフックをつけます。
1) 柱の四隅にある主筋で、重ね継手の場合及び最上階の柱頭にある場合(図a)
2) 梁主筋の重ね継手が、梁の出隅及び下端の両端にある場合。ただし、基礎梁を除きます。(図b)
3) 煙突の鉄筋(壁の一部となる場合を含む。)
4) 杭基礎のベ一ス筋
5) フープ、スタ一ラップ及び幅止め筋
曲け加工
なぜ、曲げ方がきまってるのですか?
曲げ方を無視して急に曲げると鉄筋のひび
割れの原因になるからなんだ
中間部も同じことがいえるのですか?
そう、この部分ではコンクリートが大事な役目
をしているんだ。その役目を十分発揮させるた
めに鉄筋の加工は丁寧にしなければならない
鉄筋は、設計図書に指定された寸法及び形状に合わせて常温で正し<加工します。それは、鉄筋の性質
が変わるおそれがあるからです。
また、有害な曲り、ひび割れやささ<れなどの損傷のある鉄筋は使用しません。
●鉄筋の折曲げ(末端部)
急激な折曲げは、鉄筋に大きな内部応力を発生させ、曲げ部に有害なひび割れが発生する原因になり
ま す。また、引張り力が加わった時には、内側のコンクリートにも大きな局部圧縮応力を発生させる原因
と なるので、緩やかに曲げる必要があります。
●鉄筋の折曲げ(中間部)
中間折曲げ筋の内側のコンクリートは、支圧強度によって鉄筋の応力の方向を変える役目を持っています。
従って、内側のコンクリートが十分な強度を発揮するためには、適正な折り曲げ加工をしなくてはなりません。
継手位置は、応力の小さいところで常に圧縮力が働いているところに設けます。継手を集中して設ける とコンクリートがまわら
なくなったり、構造上の弱点(同一箇所での破断)となるおそれがあるので、壁筋、スラブ筋を除き、隣合う継手位置はずらす
こととしています。なお、同一位置に継手を設ける場合は図面での指示によります。
鉄筋の継手には,重ね継手,ガス圧接継手や特殊な鉄筋継手(建築法施行令第73条第2項の規定に甚づき定められた機械式継手)を図面の指示によってそれぞれ使い分けをします。図面での指示がないときに は,柱及び梁の主筋はガス圧接とし,その他の鉄筋は重ね継手とします。